§0001 ノリリスク訪問記

 〜 三井物産株式会社 池水雄一氏
(06.09.27)


 今回はノリリスクニッケルという世界最大のニッケル鉱山を持つ会社の招待でその鉱山見学に行ってきました。もちろん僕一人ではなく、世界各地から取引先を招いて行っているものです。今回は中国を除くアジアから。具体的には日本、韓国、香港、インド。中国は中国だけで別にやったそうです。ニッケル関係とPGM関係の人々が招かれました。
総勢28名。

 ノリリスクはロシアにおけるPGMの主な生産者であり、特にパラジウムにおいては世界最大の生産者です。ロシアのパラジウム生産高の100%を占め、世界の鉱山生産の46%になります。ロシアからの供給不安のためにパラジウムが急騰した事が過去何度もありますが、一つの生産者がその半分のシェアを持つ物ではこういった事態は簡単に起こりえます。

 さて、彼の地ノリリスクは、シベリア、エニセイ川ほとり。世界地図を広げてみて欲しいのですが、メルカトル図法の地図を最短距離で楕円形で飛ぶとちょうど、東京とモスクワの中間地点あたり。北極圏内にあります。(北極圏とは北緯66.6度以北の地域だそうです。)

 モスクワから国内便でちょうど半分、4時間ちょっと東京側に戻ることになります。ところが我々のflightがノリリスクの天候不良のため着陸できず、600km東に離れたハタンガという空港に着陸し、何もないところで、8時間も時間をつぶしました。気温は0度近く、建物の中でも暖房はまだはいっておらず、みんなすることなく、結構異様な時間でした。僕は本があったおかげで二冊読みましたが。夜行のフライトの後、8時間待ち、そしてようやくノリリスクについたら速攻で精錬所の見学。その後はdinnerでのウォトカ攻め。



 ノリリスクの空港はツンドラ(小学校の社会で習いましたね!)のど真ん中にあり、回りは見渡す限りの平原が広がります。街までは約一時間。街はとてもきれいです。ロシアの平均月収が$300であるのに対してこの街のそれは$1000ドルあるそうです。まさにノリリスクニッケルの企業城下町で、子供達がノリリスクニッケルのキャップをかぶっているのが印象的でした。



 ノリリスクでは、鉱石破砕工場、精錬工場、鉱山の見学。鉱山は二つのグループに分かれて、PGMグループはTajmyrskij(タイミールスキ)鉱山へ。タイミールはここの半島の名前。地下1050mへは、岩壁のシャフトをでっかい裸のエレベーターで8分かけて下ります。その後地下に張り巡らされた線路の上を数百メートル歩き、それから特大ジープに引っ張られた車両にのり、激しく揺られながら採掘現場へ。水が川のごとく流れる中、ブルドーザーで岩肌を削り、それを穴に入れるとその下で待ち受けている貨物列車にそのまま入るという方式。すべてがこのような重機で行われています。とにかくすべてのスケールが大きく、これは旧ソ連の重厚長大産業重視政策が成功した例だなあ、と感じました。



 行く前は最後まで断る口実を探していたのですが(笑)、やっぱり行ってよかったというのが今の感想。とてもいいものを見せてもらいました。やはりこのような機会は逃さないほうがいいですね。何故PGMがこんなに高いのか、まさに「体」で感じさせて頂きました。

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池水雄一氏のプロフィール

商社ディーラー
三井物産株式会社
商品市場部 貴金属営業室 チームリーダー


1986年住友商事株式会社に入社し
1990年クレディ・スイス銀行へ
1992年三井物産株式会社で勤務を開始
現在、商品市場部貴金属営業室、チームリーダーとして活躍中
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