LBMA/LPPM Precious Metals Conference in 京都
2008年10月15日

 9月29日−30日の二日間、京都でLBMA/LPPM Precious Metals Conferenceが開かれました。今週はその様子をレポートしたいと思います。

「LBMA/LPPMとは」

 LBMAはLondon Bullion Market Association、の略で、ロンドンの金・銀市場の参加者によるいわゆる自主規制団体といってよいかと思います。金・銀の取引ではロコ・ロンドン取引(ロンドン渡し、ロンドンの銀行に口座を開いて金・銀の受け渡し-付け替えを行うこと)が世界の標準となっており、歴史的にもロンドン市場の地位は世界の中心です。

 その取引ルールやデリバリー標準品の指定など、ロコ・ロンドン取引の規範はここで作られています。ロンドンのみならず世界中で取引されるロコ・ロンドン取引はLBMAのルールに従っています。

 LPPMはLondon Platinum and Palladium Marketの略です。プラチナとパラジウムに関してはロンドンではなくロコ・チューリッヒ取引が世界の標準ですが、取引主体となるプレーヤーがロンドンに多くいるので、LBMAに準拠する形でできた自主規制団体です。

 この二つの団体に関する詳細はまた本編で触れたいと思います。

 LBMAのURL : http://www.lbma.org.uk/core_page.html
 LPPMのURL : http://www.lppm.org.uk/

「LBMA Precious Metals Conference」

 LBMAは毎年世界のどこかでPrecious Metals Conferenceと冠した国際会議を開きます。過去を振り返ると、サンフランシスコ、リスボン、上海、ヨハネスブルク、モントルー、ムンバイといった都市で行われており、今年は初めての日本、それも古都京都で行うことになりました。極東では2004年の上海に続いて二度目の開催になります。今年は初めてLBMAとLPPMが共催する形での会議となりました。ちなみに来年はペルーのリマだそうです。

 これはささやかなる自慢ですが、私は過去15年以上、LBMAがconferenceを自分たちで始めるまえのFT(Financial Times) Gold Conferenceの時代からずっと一度も欠かさずに出席しています。そういえばそれくらい昔には日本でも日経ゴールドコンファレンスというのがありました。昔は二日間にわたって、海外からもたくさん参加者があり、日本の商社各社がカクテルパーティーを開くといった盛況な会議だったのですが、どんどん寂れていき、今年はもうその名を聞かなくなりました。日本市場の盛衰を表しているようで寂しい限りですね。

 今年のLBMA Conferenceの参加者は438人とこれまでの最大の参加人数になったようです。やはり京都のネームバリューは大きかったようです。この前の週にはニューヨークでナイメックス(NYMEX)のプラチナウイークでもあり、海外からの参加者の中にはニューヨークから直接やってきた人々も多数いました。

 一日目はLBMA/LPPMの両会長からの挨拶に続いて、基調報告スピーチは英エコノミストの元編集主幹Bill Emmont氏。実はこのスピーチは日本の有名人にやってもらおうという計画でいろんな人(元日銀関係の榊原氏や福井氏など)にアプローチしたようですが、残念ながらもろもろ折り合いがつかず、結局こうなったようです。

 その後、住友商事理事の高井氏による「日本市場の概要」。これは日本の貴金属市場の歴史的流れを紹介したもので、その歴史を生きてきた高井氏ならではの非常に興味深いスピーチでした。そのほかの一日目のトピックは、まさに現在のマーケットを動かしている「投資対象としての貴金属」、LPPMとの共催であるゆえの「PGM−南アの直面する困難」、「PGM−現在の重要案件」といったところです。

 二日目は、「貴金属相場高騰の影響」、「トレーディングの傾向」。会議期間中にいろいろミーティングをしたりするので、私も全部を聴いたわけではありませんが、今年は例年に増しておもしろいスピーチが多かったような気がします。特に住商高井氏、WGC豊島氏の日本人のスピーチはおもしろく、かつ楽しいものでした。

 マーケットに対しては総じて強気のコメントが目立ちました。まあ期間中にゴールドが926ドルまで一瞬上がったこともあり、未曾有の金融危機のまっただ中にある状況では妥当なところでしょうか。

 参加者の438人のうち、日本人は名簿を見る限りちょうど100人。もちろん史上最多の日本人参加です。こと今年に関しては、外国からの参加者よりも日本のいろいろな貴金属業界人と話ができたことが有意義でした。

 来週は京都観光とグルメの話です。



LBMA/LPPM Precious Metals Conference in 京都(その2)
2008年10月15日

 さて今週はぐっとくだけて京都の話を少ししましょう。僕は関西の出身ですが、京都は数えるくらいしか行ったことがありません。小学生の頃にバス旅行で行ったのと、大学受験の直前に友人たちと平安神宮の天神様(菅原道真)に合格祈願に行ったことが記憶にある程度です。

 今回土曜日に京都入りし、土曜日夕方と日曜日は基本的に自由時間でした。土曜日はホテルが西本願寺の隣だったので、軽くジョギングもかねて、西本願寺、京都駅、そして東本願寺を見て回りました。残念ながら西本願寺、東本願寺とも御影堂と呼ばれる巨大な本堂は修復工事中で、周りが壁で囲まれており、見ることができませんでした。東本願寺の御影堂は927畳もの広さがあり、世界最大級の木造建築物だそうです。その門からして写真に撮ろうとしてもフレームに収まりきらないのであきらめました。東本願寺は徳川家康が西本願寺から分立させたとか。

 土曜日の夜はロンドン、香港の店から来た人達二人と東京からの三人であこがれの「菊乃井」本店へ。さすがです。これだけおいしい懐石料理は初めて。店員さんのサービスも日本庭園が見渡せる数寄屋造りの部屋もいうことなし。1万5千円という価格もその価値は十分あるものと感じました。連れて行った外国人たちよりも我々のほうが感激した次第。さすが京都。

 日曜日は京都の街を走ろうと朝一番でランニングに出ました。ホテルから二条城まで2km、そして二条城のまわり2kmを4周してホテルに戻り、ちょうど10km。碁盤の目のような京都の街の一部を足で感じました。二条城は江戸時代の徳川家の居城であり、大政奉還の場所でもあるとか。朝早く、その周りを走っただけなので観光とは呼べませんが(笑)。

 この日は、外国人の連中を連れて清水寺と金閣寺を回りました。聞くところによると清水寺は経済的に檀家に頼っていない、全国的にも数少ないお寺なんだそうです。拝観料とお賽銭、そしてそういった資産の運用だけで成り立っているとのこと。彼らの考えているのは1年先や2年先の話ではなく、何百年もの先のお寺の維持を考えており、そういった「時間」が彼らの資産運用における最大の武器だと、お寺の関係者はおっしゃっていました。清水寺はさすがに京都を代表する観光地。日曜日でもあり非常に人が多かったのですが、これでもまだシーズンオフで少ないほうだと。地元の小学生のグループが外国人観光客に英語でインタビューするという学校の課題があったようで、うちのロンドンから来たゲストはインタビュー責めにあっていました(笑)。

 お恥ずかしい話ですが、金を過去20数年間も取引してきたのにもかかわらず、金閣寺には行ったことがありませんでした。ですからこれもまた、外国人連中を案内したというよりは、個人的にとても行ってみたかったので行ったというのが正直なところ。で、初めて見た本物の金閣寺は本当に金色に輝いていました。まさかこれほどとは、と自分の中にあった予想を遙かに上回り、感動的な金ぴかでした。正式名称は鹿苑寺。臨済宗相国寺派の禅寺で、足利3代将軍義満が隠居していた北山殿がその前身。

 さすがに我々のプロフェッショナルな興味は、どれくらいの金が使われていて、ヘッジはしているのか?(笑)ということでしたが、帰りのタクシーの運転手に教えてもらったのは、使われている金量は20kgだそうです。金沢から金箔職人を招いて、10cm四方くらいの金箔を一枚一枚丁寧に張り付けているとのこと。20kgじゃあヘッジはしないですな(笑)。

 この日の夜は、ドバイ、シンガポールの人間達も加わってホテルで紹介してもらった和風居酒屋へ。海外からのゲストのうち、ロンドン、ドバイの人間は日本が初めて。初めての日本で京都なんかに来られるとはこいつらはラッキー。特に前日に「菊乃井」に行ったロンドンの人間には、日本人がいつもこんなにうまくて上品な超A級ものを食っていると思うなよ、とわざわざ釘をさしておきました。その後東京に戻った時にしっかり、B級代表じゃんがらラーメンのこってりしたやつを食わせておきました。これでちょっとはバランスがとれただろう。(笑)

 さて、翌月曜日のコンファレンスのカクテルパーティーは、そぼふる雨の中、高台寺の駐車場を利用した特別な会場で行われました。高台寺の庭園ツアー、その後のカクテルでは、いろいろな趣向がありました。琴の演奏と舞踊、習字、扇子投げなどなど。僕がうれしかったのは、本物の舞妓haaanと写真を取ることができたこと(笑)。

 その後dinnerは最初に配られたはっぴの色に合わせて三つのレストランに分かれてのディナーになりました。私が指定されたのがこれまた有名な懐石料理の「京大和」。ここもおいしかったです。でも菊乃井のほうがおいしかったかな。おそらく100人もいるような大人数だったので、なかなか少人数の普通のメニューほどの繊細なことはできないのかもしれませんね。

 今回の京都で印象に残ったこと。とにかくさすがの国際観光都市であるということ。まずタクシーの運転手さんたち一人一人がガイドと言ってもいいほど、京都に関する知識にあふれていました。我々が乗ったタクシーでも英語はおろか、中国語まで駆使していろんな説明をしてくれる運転手がいました。自分で資料まで用意して信号待ちでそれを取り出していろいろと説明してくれる人も。愛想が悪くて道もろくにわからない運転手が多いどこかの大都市とは雲泥の差。レストランでもそうでしたが、非常に「おもてなしの心」にあふれています。こちらが恐縮してしまうくらい丁寧。まさにお客様は神様、という精神が徹底しています。これでお客さんが気持ちの良くないはずがない。客商売の原点ですね。あらゆる客商売やる人は京都に行って研修すべし!と思いましたよ。本当に。

Bruce京都を語る、おしまい。



「LBMA Precious Metals Conference 2009 in Edinburgh、Bruce旅行記(1)」
2009年11月11日


 今週からしばらくはプラチナの話は少しお休みを頂き、11月1日から3日の間、イギリスはスコットランドの古都エジンバラで開催されたLBMAプレシャスメタルズ・コンファレンスの報告をしましょう(と言っても、どちらかと言えば私の旅行記のようなものなので、肩の力を読んでもらえれば、と思います)。


 LBMAとはご存じLondon Bullion Market Associationのことです。もはやこの連載でも何度も取り上げていますので詳しい説明は不要ですね。ロンドンの貴金属マーケット参加者の自主規制団体で、実際に世界中でのロコ・ロンドン取引のルールを決め、マーケットの運営をしているところです。

 毎年一回、世界の各地でこの貴金属の国際会議を開いており、世界中から貴金属、特に金に関わる業界の人々が一斉に会し、金関係の国際会議では世界でもっとも権威と実績を誇るものと言ってよいでしょう。昨年は9月に初めて日本の京都で開かれました。昨年も報告しましたね。あれから早くも一年と二ヶ月がたちました。本来であれば今年は初めての南米開催でペルーという予定だったのですが、昨年の金融危機により、そんな遠くへお金と時間を使って行っていられないという意見が参加者から多く出されて、急遽エジンバラに変更になりました。

 個人的にはペルーに行くのであれば、是非天空の遺跡マチュピチュに行って見たかったので、大変残念だったのですが(笑)。中学・高校の頃から絶対一度は行ってみたいと思っていた場所は万里の長城とマチュピチュでした。万里の長城は初めての北京出張の折に念願かなって行く機会がありましたが、マチュピチュはどうやら引退までお預けのようです。

11月1日(日曜日)

 私は日曜日のJAL便でロンドン・ヒースロー経由エジンバラに入りました。日曜日の朝いつものごとく午前4時に起きて、月曜日分のBruce Reportを書いて、6時から12kmほど井の頭公園を走ってから、8時前に家を出て、エジンバラに到着したのが日曜日の夜7時。時差を考えるとほぼ20時間かかったことになります。やっぱり遠いですね。

 エジンバラに到着するとそこは冷たい雨。天気悪いなあと空港からホテルまでの車から外を見ていると、なんとハイウエイの立体交差の下は冠水して、そこに沈んだ車の屋根だけが見えるような状態。後でテレビのニュースで聞いたところでは15年ぶりの大雨だったそうで、一部の地域では住民が避難したりする騒ぎになっていたようです。ひええ。

 この日は市の中心部にある会議の会場であるThe Balmoral Hotelで夕方5時から7時まで会議イブのカクテルパーティーがあったのですが、私が着いた時点ではもはやそれは終わっていました。銀行によってはカクテルパーティーの後、顧客を招待してディナーを行ったところもあったようですが、私の銀行はそういった色気のある催しはなし。一緒に行った同僚が以前エジンバラに観光で来たことがあり、彼がおいしいと思ったレストランへ二人で出かけました。

 Mussels Innというレストランでその名の通りムール貝が名物のシーフードのお店です。日曜日でほとんどのお店が閑散としている中、このお店は大繁盛。飛び入りで行った我々は約30分、隣のパブで時間をつぶさねばなりませんでした。久しぶりに生ぬるい地元のBitterビールを飲みました。これはイギリスだけですね。僕は地元の連中が言うようにGassy(ガスがたくさん入った)Lagerよりも、ぬるいけど味があるBitterが好きです。ロンドンでも若い世代はLagerが主流になりつつあるようですが、こういうところはアメリカナイズされないで欲しいもんです。

 さて、30分待って入ったMussels Innは大正解でした。まずSeafood Chowder。貝だけではなくて魚の肉も入っており非常に濃厚。同僚の一押しだけのことがありました。私はクラムチャウダー偏愛者なんでこれはほんとうにおいしかった。同僚はオイスター偏愛者で、当然オイスターも頼み、そして看板メニューのムール貝。バケツのような容器で蒸して出てきます。単位は500グラムか1キロ。二人で500グラムにしました。それでもすごい量でした。

 そしてお約束のフィッシュ&チップス。ハドックという鱈に似た魚が最近は主流のようです。本物のコッド(鱈)が高すぎるんですね。これも衣がさくさくでおいしかったです。イギリスにうまい物なし、と誰がいったのでしょう。二人で白ワインと飲み、これを全部平らげて一人3000円くらい。大満足の1日目でした。

 来るときの飛行機ではほぼ寝なかったので、ホテルに帰ってシャワー浴びてすぐ寝ることができました。ちなみに飛行機の中では映画と原稿書き。映画はハリーポッターと謎のプリンス、G.I.ジョー、築地魚河岸三代目、釣りバカ日誌9をたて続けに見ました。もう何年も映画は飛行機でしか見ていません(笑)。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/



「LBMA Precious Metals Conference 2009 in Edinburgh、Bruce旅行記(2)」
2009年11月18日


11月2日(月曜日)

 朝6時半にジムが開くのを待ってジムラン11km。本当は外を走りたかったのですが、この時間まだ暗いのですね。気温も一桁台で結構寒かったこともあり、外を走るのは断念。朝食は空港ラウンジでもらってきたクッキーと部屋のコーヒーで済まし9時からの会議に。

 今年の参加者はざっと名簿を数えたところ約400名。過去最大人数の500人を越えた昨年の京都には及びませんが、今年は初めてキャンセル待ちが出たほどに参加希望者は多かったようです。急遽場所を移した関係からか、会議場の収容能力が限られたために希望者全員がすんなりと参加できるわけではなかったようです。

 今年のコンファレンスはLBMAとしては10回目のものでした。それ以前はFinancial Timesが毎年開いていました。私はFTの時代から17年連続でこの国際会議に参加しています。もちろんLBMAになってからも10年連続参加。会議の冒頭に進行役のLBMA Executive Stuart Murray氏によるとこの10年間一度も欠かさず出ている人間は二人だけということ。その一人は私であるわけで、これはちと驚きました。ちなみに何の表彰も連絡すらありません(笑)。

 今年の会議のプログラムは以下の通りです。基調報告(Keynote speech)はECB(欧州中央銀行)のPaul Mercierという人でした。ECBの人間が金に関してこの会議でしゃべるのは初めてのことで、これはみんなの注目を浴びて、最終日の参加者によるspeakerの評価では第一位に評価されていました。「今後も金は売る」ということを明言していました。

 例年、この会議の主題は「需要と供給」という伝統的ないわゆるファンダメンタルズが中心でしたが、今年は明らかに参加者もスピーカーもその興味の中心には「投資」というものがありました。会議の進行中にも金相場は歴史的高値を更新し、もはやこれまでの実需と投資のバランスが大きく崩れて、まさに金融危機以降の「投資」マネー流入により金相場がどうなっているのか、どうなっていくのかという議論が中心だったと思います。

 これまでの投資による極端な相場急騰の頭を押さえてきた実需の買い控え、もしくは売り戻しといった行動はもはや巨大な投資マネーの流入に完全に飲み込まれてしまっている感があります。現在の金市場はもはや昔の相場とは違うもの、金の役割自体が変わったのだと主張するヘッジファンドの人間もおりました。昔は投資の対象としてはあくまで傍流だった金が今まさにメインストリームとなり、巨大な資金が流入しているというのです。現在の相場はまさにそういう状態でしょう。

 さてまじめな話はさておき、この日のランチは特に予定も無かったのですが、某金髪ロンゲで日本でもおなじみのアナリストに誘われ、彼のめっちゃかわいい彼女と一緒に外に飯を食べに出ました。彼らは今ブルゴーニュに暮らしているそうです。かっちょよすぎ。

 彼は、現在の投資マネーがコントロールする金相場には未だに高値警戒感を持ち続けています。この相場を維持するためには投資マネーが休むことなく入り続けて来なければならないと。基本的に需給の数字を積み上げて行くことをやっている調査機関にある彼にとってはやはり実需の不在が非常に気になっているようでした。これは僕も同じ。ただ今回は実需不在をものともしないだけの投資マネーが流入していることがこれまでとの違いですね。

 お腹いっぱいにカジュアルフレンチをご馳走になり、さすがに時差もあったので午後のセッションはスキップ。ホテルに帰って昼寝。夜のLBMA Dinnerに備えました。(笑)

 夜のディナーはPrestonfield HouseというところのStablesというレストランでした。今回エジンバラに来てから、私が主催している友人たちとのメイリングリストで、今エジンバラに来ていると書いたら、商社で働く大学の先輩でエジンバラに詳しい人が、おすすめのレストランとして前日のMussel InnとこのStablesを強く薦めてくれました。全くの偶然でこの二つのレストランに行くことになった僕には食の神様がついているに違いありません(笑)。

 とはいえ400人のディナーであるのでそんなに期待はしていなかったのですが、前菜に出てきたScottish Smoked Salmonにぶっ飛びました。スモークサーモンと言えばあの薄いやつしか知らないのですが、ここで出てきたのは焼き鮭のようなでっかい切り身。それの表に軽く火を入れて、中はレア。これがスモークサーモン。付け合わせはサツマイモのマッシュポテトにポーチドエッグを載せたもの。ばらばらのエッグベネディクトのイメージ。とにかく僕が人生で食べた最高のスモークサーモンでした。もう一切れ食べたかった。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/



「LBMA Precious Metals Conference 2009 in Edinburgh、Bruce旅行記(3)」
2009年11月25日


11月3日(火曜日)

 あっという間に会議も最終日。この日の午前中ですべてが終わり、また金マフィアたちは世界中に旅立って行きます。

 私は朝7時からとあるファンドのトレーダーと朝食。彼はゴールドに関してはとにかく強気。もはやゴールドの役割が変わったとの見方で、これまでの需給によるマーケットの見方はもはや通用しないと、著名なスイス系銀行のアナリストの見方を否定していました。もちろん彼はそのアナリストとは非常によい友人であり、個人的な批判ではなく、マーケットが変わったということを強調したかったのです。

 つまり、実需での現物の動きを遙かに超えるレベルの資金が流入しており、もはやすべての実需の動きはこのマネーに飲み込まれている、ということです。1000ドルを超えて上昇を続けるゴールドはもはや高値のための実需による需要の不在や、スクラップの売り戻しによってその勢いが止まるようなものではない、というのが彼の見方です。

 僕もこれまでのゴールドマーケットではこの実需の売り買いによる、価格の下支えや上値を抑えるといった事が有効で、それによりマーケットの先行きを考えていました。ところが、現在はもはやそれが有効でないことをひしひしと感じます。これまではかろうじてでも保たれて来ていた実需と投資のゴールドマーケットでのバランスが、新たなマネーの大量の流入により、圧倒的に投資の存在が大きくなった。今はそんな状態ですね。

 彼との朝食のあとホテルのジムでラン、そして会議の最後のセッションへ。LBMA conference最終日は午前中だけ。毎年、最後のセッションで参加者からアンケートを取ることが恒例になっています。来年のコンファレンス(2010年9月26−28日、場所はベルリン)時点での相場予想です。

 ちなみに昨年9月30日の京都での翌年、つまり今回のエジンバラ時点での金相場の参加者予想の平均は956.50(2008年9月30日のAM Fixingは897ドル)。実際の今年の価格は1085ドル。業界の総意としては強気でありましたが、実際のマーケットはそれを越える強気の相場になりました。

 そして今年の参加者の来年のコンファレンス時の予想価格の平均は1181.30ドルとなりました。昨年とほぼ同じくらいの強気の予想ですね。果たしてこれでも十分強気でないのか。それとも業界全体で大はずれとなるのか。来年が楽しみです。ちなみに私は迷わず1200ドルとアンケート端末を押しました。ほぼ平均値に近い答えであり、マーケットのコンセンサスに近いものでした。

 午後3時過ぎにエジンバラからロンドン・ヒースロー空港へ。エジンバラ空港ではがっつりFish & Chipsを。そしてヒースローからJAL便で成田へ。見たい映画は行きでほとんどみてしまったので帰りの便ではこの原稿をはじめ、いろいろと書き物と読書。帰りもほとんど寝ませんでした。ロンドン便の場合それが一番の時差対策かと思います。

 次にロンドンに行くのは来年5月のプラチナディナーでしょうか。今回は天気と時間の関係からほとんどエジンバラを見て回ることができなかったのが唯一の心残り。ランをしながら観光したかった。来年ロンドンでまたハイドパークを走れるのを楽しみにします。

終わり

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/