2008年 LPPM Platinum Week レポート
2008年5月28日

 

 5月の第二週は毎年ロンドン・プラチナ・ウィークと呼ばれて、世界中からプラチナグループメタル(PGM)の関係者がロンドンに一斉に会する一週間となります。今年は5月19日から23日の一週間でした。毎年ほぼ同じペースでイベントがつながっています。今年は主なところは以下のような日程でした。

5/19(月)
ジョンソン・マッセイ ランチ(Johnson Matthey Lunch)
エンゲルハード ディナー(Engelhard Dinner)

5/20(火)
三井 PM 朝食会(Mitsui PM breakfast)
LPPM カクテルパーティ(LPPM Cocktail Party)
スタンダードバンク ディナー(Standard Bank Dinner)

5/21(水)
ヘラウス ランチ(Hereaus Lunch)
LPPM ディナー(LPPM dinner)

5/22(木)
ノリリスク パーティー(Norilsk Party)

 GOLDの催しであるLBMA(London Bullion Market Association) Precious Metals Conferenceでは、毎年一回、金に関係のある場所で二日間の会議が行なわれますが、このLPPM(London Platinum & Palladium )のイベントは毎年ロンドンで行なわれます。そして会議のようなものはなく、上記のようにLPPMによるCocktail Party /Dinnerを中心にして、PGMに力を入れている各社による食事会が開かれます。

 

 ほぼ同じ面子(メンツ)で、一週間ランチ、ディナーというのが場所を変えておこなわれます。その合間に取引先を訪問するといったハードなスケジュールをみんなこなしていくわけです。私は月曜日の夜に入って木曜日の夜に出てきたので、月曜日と木曜日のイベントには出ませんでしたが、月曜日のJohnson Matthey Lunchでは毎年、通称JMレポートと呼ばれるレポートが発表されます。今年は「Platinum 2008」。
http://www.platinum.matthey.com/publications/Pt2008.html

 大雑把な骨子は以下の通り。毎年このJM Reportの需給分析を材料に相場が動くこともしばしばなので、特に注目されています。

「Platinum 2008」

・南アの生産不安と力強い自動車触媒需要により、2008年も大幅な供給不足になることは確実。

・下値のめどは1775ドル。高値は11月までに2500ドルに達し3月につけた2300ドルの史上最高値を更新する可能性大。

・2007年は48万オンス(14.93トン)の供給不足であった。これの原因は労働争議と鉱山の安全問題であった。

・2008年は年初から電力不足が問題になり、1月下旬には鉱山会社への電気の供給が一時的にストップ。2月には90%、3月には95%まで電力供給は回復したが、電力不足は最低でも新しい発電所が稼働を始める予定の2012年までは続く見通し。

・電力供給が95%回復したという現状が続くという条件のもとに、2008年の供給不足はおそらく20万オンス(6.22トン)以下になるであろう。

・しかしこれに加え、今年前半の洪水により一時的に閉鎖されたAmandelbult mine からの供給ストップにより5万−7万オンス(1.56−2.18トン)の供給減になるであろう。

・2007年の世界のプラチナ供給は4.1%減少して、6.55百万オンス(203.73トン)。これは南アの生産が4.9%減って5.04百万オンス(156.76トン)となったことが原因。

・2007年の世界のプラチナ需要は8.6%増加して、7.03百万オンス(218.66トン)。自動車触媒が8.2%増えて4.23百万オンス(131.57トン)となったがことが主因。

・2007年宝飾需要は3.4%減少で1.59百万オンス(49.45トン)。

・2007年投資需要はスイスのETFの登場により17万オンス(5.29トン)となった。
2006年は4万オンス(1.24トン)のマイナス。

・2008年の投資需要はUBSによるETNの登場が注目される。

次回に続く



2008年 LPPM Platinum Week レポート(2)
2008年6月4日

 5月20日の夕刻にはセント・ポール大聖堂(St. Paul's Cathedral)の地下聖堂(Crypt)でLPPM Cocktail Partyがありました。セント・ポール大聖堂はロンドンの金融街シティの中心に位置するイギリス国教会の大聖堂です。今回私は初めてその中に入りました。非常に荘厳で大きな聖堂です。巨大なパイプオルガンや窓や天井のモザイクが圧倒的。ロンドンに観光で行かれる方は是非行ってみてください。一見の価値ありです。

 さて肝心のカクテルパーティですが、今年はこの会場に入れる人数の関係上約300名で人数が制限されたようです。招待状がなくて入り口で入場を拒否された人が少なからずいたとのことです。例年ではカクテルパーティにはだいたい500名くらい集まります。世界中のプラチナを扱っている企業の人々がほとんど集まってきているといえるでしょう。こういった機会にできるだけたくさんの人々と話をしていろんなビジネスの可能性を探ります。また旧知の人間とはお互いの近況報告をします。それがまた人間関係を更新することになります。

 ちなみに日本からの参加者も、金・銀が中心のLBMA(London Bullion Market Association)主催で行われるPrecious Metals Conferenceでの日本からの参加者の数より遙かに多い会社、人々が参加します。先日発表された英ジョンソン・マッセイの「プラチナ2008」では日本のプラチナ需要が中国に追い抜かれたものの、プラチナの需要量世界一を誇ってきた日本の面目躍如というところでしょうか。

 逆にほかのアジアの国々からの参加は非常に少なく、参加者の大部分は欧米と日本からということができます。私が気づいただけでも、日本からは各商社、大手貴金属商、鉱山会社、リサイクル業者など約20社近く、人数にして30名以上いたと思います。正直いいますと毎年ロンドンのこの場でしかお会いしない日本人の皆さんもたくさんいたりします(笑)。

 私の属するStandard Bank も毎年火曜日の夜、つまりこのLPPMのカクテルパーティの後に遅いディナーをレーンズボローホテルで行います。セント・ポール大聖堂前から大型バスに二台に分乗し向かいました。1テーブルに12人。全部で10テーブル、120人。そのうち2テーブルは日本人ばかりのジャパンテーブルでした。

 毎年Standard Bank DinnerはLPPM cocktail partyの後に行われるので、大変遅くなります。ディナーが実際に始まるのは9時をずいぶんと過ぎてから。そして最後のデザートが終わるのは12時を越えることもしばしばです。今年はそれでも11時半くらいには終わり、その日のうちにホテルに帰ることができました。



2008年 LPPM Platinum Week レポート(3)
2008年6月11日

 Platinum Week の間は、日本からの参加者はランチ、カクテル、ディナーの合間を縫いながら、ロンドンの各社を巡ってミーティングを繰り返すことになります。私は逆にロンドンの本店にて訪問者とのミーティングを繰り返す立場でした。日本の方々にとってはロンドンまで行って日本人に会うのもへんな感じであったろうと思います。

 さて、5月21日水曜日にはドイツの精錬会社ヘラウス社のランチとLPPMのディナーがありました。ランチがやはり二時間以上のフルコースです。昼間からワインも飲んでもはや午後はこれでほとんど潰れます。LPPMディナーの場所は毎年サボイホテルと決まっているのですが、今年はサボイホテルが改装中とのことで、王立裁判所(Royal Courtof Justice)でのディナーとなりました。

 海外ではこういった歴史的建造物や博物館でのディナーパーティーがよくあります。当然のことながらレストランではありません。すべては外部から運び混むことになりますが、今まで不自然に感じたことは一度もありません。さすが。この王立裁判所は今でも実際に使われており、一日に何十もの裁判が行われているとのこと。同じテーブルになったとある銀行の役員は陪審員をやっており、今週も何回もここに来ていると。夜間とはいえ裁判所をこのような催しに解放してくれるとは、規則とか前例とかを振り回すどこかの国ではまずあり得ませんね。

 今年は5月21日がサッカーの欧州チャンピオンズリーグの決勝戦と同じ日になりました。それもなんと決勝戦はマンチェスター・ユナイッテッドとチェルシーという英国のチーム同士の対決。LPPMのディナーにはみんな来ないのではないかという杞憂もありましたが、ちゃんとほぼ満席。ちなみにこの決勝の結果は、マンUがPKの末チェルシーを下して、ヨーロッパチャンピオンになりました。ロンドンの連中はみんな携帯電話にかじりつきでした。時々悲鳴のようなものが聞こえました(笑)。

 このディナーも招待券がないとだめ。会員各社に一社ごとに人数が割り振られます。座席は適当にばらばらに振り分けられていますが、どうも日本人の隣は日本人が割り振られています。気を遣ってくれてるのでしょうね。

 LPPMのチェアパーソンである三井プレシャスメタルズのMs. Anne Dennisonのスピーチがあり、彼女は今年でチェアを降りるとのこと。後任はHSBCのPhillip Cruz Garnerになるとのもっぱらの噂。まあ何十年もこの業界にいる人間ですね、誰がなるにしろ。今年のゲストスピーカーはDr. Kurt Bock, BASF AG。そしてディナーのメインが終わるごとにゲスト代表の返礼のスピーチがあります。今年はWogen ResourcesのMr. DouglasHunter。なかなかジョークに富んだスピーチでなかなか受けていました。英語でスピーチするなら、ジョークはお約束ですね。なかなかその域には達しませんが。

 さてデザートがすべて終わってやっぱり12時前でした。最後のほうはみんな入り乱れていろんなテーブルに動き回って知っている人間との情報交換を行ったり、それをきっかけに新たな人間を紹介してもらったりします。実はそれがロンドン・プラチナ・ウィークの結論。人間関係を強化し新たな関係もしっかり築くこと。

 翌日は午前中オフィスに出て、午後から帰り支度。ロンドンのおみやげは昨年からWhittardの紅茶。ロンドンで唯一割安だと思えるのが紅茶。昨年友人からおみやげに頼まれてここの紅茶を買ったらこれがおいしくて、自分用一年分と会社へのお土産はまとめ買い。ダージリンやアールグレイといった定番からいろんなフレーバーティーもあって飽きません。ラプサンスーチンなんておもしろいですよ。紅茶もたぐるとインドや中国に行き着いてなかなかおもしろいです。

 ということでロンドンレポートはこれで終わり。

 次回はシンガポール編です。



プラチナウィーク2010
2010年5月20日

 5月18日(火)が僕にとってはプラチナウィークの一日目になりました。もちろん月曜日からいろんなイベントが始まっています。月曜日はジョンソン・マッセイのランチ、エンゲルハードのディナーがありました。そして火曜日はLPPM(London Platinum & Palladium Market)のカクテルパーティー、そしてスタンダード・バンクのディナーrがありました。僕は出席しませんでしたが、昼食から午後にかけてはLPPMの主催の半日セミナーがありました。これは始めての試みで、LBMAのカンファレンスとは違い、例年プラチナウィークはランチ& ディナーを主要な会社が個々に催し、水曜日の夜にLPPMのディナーがあるというだけでした。しかし今年からこのセミナーを催し、参加者が出張として来やすくしたようです。

 昨日のセミナー、昨夜のLPPMのカクテルパーティーそして今晩のLPPM ディナーはいずれもThe Wallace Collection, Hertfort House,Manchester Squareでありました。ここは昔の個人美術収集家のギャラリーのようなところで、すばらしい絵画がたくさん展示されていました。参加者はざっと300-400人と言ったところでしょうか。

スタンダード・バンク ディナー

 スタンダード・バンク ディナーは毎年火曜日の夜にLanesborough Hotelにて行われます。今年も100名強の参加でした。プラチナウィークの間の食事では料理が一番おいしく、時間が一番遅くなるということで有名です(笑)。今年も悪くなかったと思います。前菜はホタテのカルパッチョ、メインはラムのローストでした。僕は羊がだめなんですが、ここのラムはまったく匂いもなく初めておいしいと思いました。完食でした。世界中から人が集まるこのようなイベントでは、宗教上の禁已のほとんどないラムはメニューとしては便利なんですな。

 日本からの参加者は15人。僕は日本人テーブルのホストをしました。毎年翌年のこの日の価格を参加者に予測してもらうのですが、今年もそれをして、日本の業界の専門家の予想を集計してみました。プラチナは最高値が2100ドル、最低値が1400ドル。平均値が1933ドル。パラジウムは最高値が1005ドル、最低値が500ドル、平均値が766ドルでした。足下の相場が1670ドルと500ドルであったことを考えると圧倒的に強きの見方の専門家が多いことになります。これは現在のマーケットのセンチメントを端的に表す数字であり、非常に興味深いですね。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/



プラチナウィーク2010(2)
2010年5月27日

 今週も先週に続き、ロンドン・プラチナウィークの話。

 18日のスタンダード・バンクディナーの翌19日はHeraeusランチ、そして夜はこの週の中心的イベントとも言えるLPPM ディナーです。

「Heraeus LunchとAbbey Road」

 Heraeusはドイツの老舗オーナー企業です。ここのランチは毎年Claridgesというホテルのball roomで行われて200人以上の参加者があります。毎日ほぼ同じメンバーでランチ/ ディナーを繰り返すわけです。さすがに水曜日ともなるともはやお腹はぱんぱんです。が、それでも完食してしまう自分に感心です。

 HeraeusランチのあとはLPPMディナーまで時間があります。今年は長年の夢であったAbbey Road(アビー・ロード)に出かけました。同じくプラチナウィーク参加の業界の先輩がBritish Rockに詳しく、またロンドンに駐在経験もあって、Abbey Roadへ連れてってあげるよ、との言葉に甘えた次第です。おそらく僕が持っているすべての音源(ロック、ジャズ、クラシック、ポップス、フォークなど)の中でもっともたくさん回数を聴いているアルバムがThe Beatles の「Abbey Road」です。そのジャケットの写真になっているAbbey Roadの横断歩道はビートルズファンにとって一度は訪れたいメッカともいえる聖地なのです。

 今まで何度となくロンドンには来ていましたが、ついぞその機会がありませんでした。今回ようやく初めていくことになりました。ロンドンのハイドバーク近くのホテルからタクシーで10分ちょいくらい。地下鉄でいうと St John's Wood という駅で、あっけないくらい近いところにありました。先日売却騒ぎがあったアビー・ロードスタジオはおそらく1960年代後半、彼らがあの傑作アルバムを録音したころとなんら変わりなくそのままの風情のようでした。Abbey Roadはひっきりなしに車が通る道でなかなか思うように写真を撮るのは難しいのですが、僕以外にも何組か同じような観光客がおり、横断歩道を渡る写真を撮ろうとしていました。僕もお約束の一枚を何とかとってもらい、中学生のころからの夢を果たしました。幸せ。ただやっぱりJohn やGeorgeがもうこの世の人ではないと思うとちょっと寂しかったですね。

「LPPM ディナー」

 さて、念願のAbbey Roadを渡り、この日の夜はLPPM (London Platinum & Palladium Market ) ディナー。伝統的にSavoyという有名なホテルで行われていたのですが、Savoyの改装のため二年くらい前からほかの 場所で行うようになりました。今年はWhitehallという官庁街(10 Downing street、首相公邸がある地域)にある昔の宮殿の一部で行われました。参加者は約300名。今年はこれでも人数を絞ったようです。出たくても出られなかった人も相当いたようですが、当日キャンセルの人も多かったようで、私のテーブルも三人が現れませんでした。もったいない。今年はゲストスピーカーの話が少し長く(約40分も!)、結構不評でした。ドイツ銀行のアナリストでしたが、やはりこういった席でのスピーチは短いに限ると感じました。きっと短いだけで評価されるでしょう(笑)。

 プラチナウィークには日本人がとても多く、このディナーでも一つのテーブルはほとんど日本人だけという テーブルがあり、それ以外にも10人くらいいて、やはりプラチナは日本という印象を強くしました。逆に意外なのは中国からの参加者がほとんどいないということ。実際のビジネスを考えるとこの立場はじょじょに逆転しつつあり、最近のプラチナ、パラジウムの輸入量では圧倒的に中国のほうが大きくなっていることを考えるとこれはちょっと意外ですね

 LPPMのディナーだったまさにその最中、ゴールドは1200ドルを割り込み、プラチナは1600ドルを割り込みました。参加者の大部分はやはり強気の意見が多く、今回の下げは短期的なロング筋の損切りということで一時的なものという見方の人間が多かったです。 この週頭に発表されたJM(ジョンソン・マッセイ)レポートを信頼するならば、プラチナもパラジウムも今年の最安値圏ということになります。ここは買い??

 ディナーのメインはここもやはりラムでした。羊が苦手な僕もまったく問題なく食べられるほど匂いもなくおいしいものでした。このディナーが終わったのが午後11時過ぎ。連日遅くまでのディナーが続きます。

 来週はもっと脱線してロンドンのハイドパークでのランと地元グルメのお話。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/



プラチナウィーク2010(3)
2010年6月2日

 今週はロンドンレポート最後を飾るグルメとランのお話。

「Fish & Chips」

 プラチナウィークはがっちりランチ&ディナーがくまれており、なかなか自分の好きなものを食べるチャンスはないのですが、行くと必ず食べるのがFish & Chipsです。イギリスにうまいものなし、とよく言われますが、Fish & Chipsはいつも必ず食べます。店によっていろいろと違いますが、ちゃんとしたレストランで食べると14−5ポンドもして、たいしたものです。

 今回はNotting HillのKensington Placeというこじゃれたシーフードのお店で食べてみました。前菜のついたセットランチで確か15ポンド程度。Huddockというこちらではよくきく白身の魚を分厚い衣(ビールが入っているのかな)につつんで揚げたもの。サイドはもちろんChipsと呼ばれるポテトフライ。写真を見ていただければわかるように半端じゃないボリューム。ケチャップとタルタルソースで食べます。本来は酢をかけて食べますが、マヨラーである僕にはタルタルソースはまさに望むところ。うまかったです。衣はさくさく。Huddockはタラとそっくりな食感。たらが高くなってしまって今ではFish & Chipsは主にこの魚だそうです。ただやはり揚げもの。さすがにこれだけのボリュームだと最後のほうはちと飽きがきます。それでもやっぱり来年までまた食べられなくなると思うとがんばって全部食べるのです。昔なら余裕で二本くらいは食べたと思うのですがねえ。

「ロンドンのラン事情」

 二年前から出張に出ても必ずランギアは持って行き、チャンスをみて走ることにしています。外が走れる場合は外で。外が無理なときはホテルのジムで。ロンドンはそんな僕がいったことのある都市の中でも最高のランニング環境の街だと思います。特に公園が最高です。僕はいつもHyde Parkに隣接するホテルに泊まりそこから毎朝ランニングに出かけます。

 大都会のど真ん中にある公園だと思えないくらい緑がきれいで広い。この季節、ロンドンでは5時半過ぎごろから明るくなり、夜は9時過ぎまで日の光が残ります。暑くもなく寒くもない。まさにランにはうってつけの季節なのです。僕はロンドンでも毎朝4時前に起きて(これは時差?それとも普段どおり?まったくわかりません。笑。)、Bruce Reportを書いてから、ハイドパークに出走していました。

 Hyde Parkとその西に隣接するKensington Gardenを大きく一周するとだいたい7−8km。それを約三周します。これが気持ちのよいコース。朝が早いのでまだ人影はまばらですが、ランナーは結構女性が多いです。リスがそこらを走り回り、真ん中の池では水鳥と一緒に泳いでいる人もいます。水鳥がいて水は緑なんですが、そんなことを気にかける様子もありません。ちゃんと泳げるように区画も区切ってありますが、さすがに気温は20度以下なので、ちょっと見てるだけで寒いです。


 朝早く行くと公園に低い部分に水蒸気がたまり幻想的な風景を見ることができます。また乗馬にいそしむ人もたくさんいます。最後の日には騎馬隊の訓練にも出会いました。あれはさすがに何百頭にもなるとひづめの音が轟音で、あんな騎馬隊に突入されたら歩兵はひとたまりもないなあ、と北方謙三の『水滸伝』を思うのでした。

 モンゴル帝国がどうしてあんな空前絶後の大世界帝国を作ることができたかというとやはり、馬の機動力を最大限に生かしたからなのでしょうねえ、きっと。とにかく間近で見る馬の群れの迫力はただものではありませんでした。さすが大英帝国!

 さてこのような環境を毎早朝2時間近く走ったのでした。これだけでもロンドンはよい街でした。この季節のロンドンに行くならぜひパークランをするべきですね。

「帰途につく」

 そんなこんなであっという間に帰る日。帰りはポンド安(1ポンド135円以下!以前は250円とかだった。)を利用してヒースローでいろいろ買い物。日本で買うよりはるかに安くいろいろ買えました。Oakleyのサングラス、iPhone用の増設電池一体型カバー、そしてラン仲間たちに頼まれた紅茶や化粧品などなど。電卓をたたくと、え?!ってくらい安かった。

 今回は帰国後もひとつ楽しみが。JALのお帰りハイヤーサービスになんとアークヒルズまでのヘリコプターというチョイスがあったのです。話の種に乗ってみました。当日は天気もよく、気づかない間にふわっと浮いたかと思うと、パタパタパタと進み始め、成田からほんの10分ちょいで港区赤坂にあるアークヒルズに到着。いやはやたいしたものでした。音も余り気にならず、快適なフライト。風景は絶景。東京の地形がとてもよくわかりました。

 浦安や舞浜のあたりは上からみると明らかに埋立地っていうのがよくわかりました。ヘリコプターに乗るのはうまれてはじめてだったのですが、基本的に高いところが苦手な僕もこれなら全然平気です。成田に着陸してから家につくまでわずか1時間30分。普段の半分で帰宅できました。このサービスは嬉しいな。

 ということで今回のプラチナウィークも短い期間にいろんなことしてきました。来年もまた走ろ。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/



生産コストから考えたプラチナ価格
2010年6月9日

 今週は、ロンドンプラチナウィークに引き続いて、プラチナの話題をもうひとつ。いよいよワールドカップの開幕直前にせまった南アのプラチナ生産コストに関する話です。


「生産コストから考えたプラチナ価格」

 PGM価格の急落を受けて、PGMの生産コストからの相場を考えてみました。南ア・ランドがUS$1=7.5ランドというのが2010年のこれまでの平均であり、これで計算するとプラチナは1500ドル、パラジウムは420ドル、そしてロジウムは2700ドルが基本的にこれらのメタルの底値であるのではないかと思われます。

 Standard Bankの南アのPGM生産者の生産コストの計算モデルに、南ア・ランドをUS$1=ZAR7.5とし、2010年の鉱山コストのインフレ率を10%と仮定すると、

・プラチナ$1500 / パラジウム$420 / ロジウム $2700で南アのプラチナ鉱山にとってのPGMのバスケットプライスが$1244となる。

・この価格であれば、98%の南アのPGM生産は「キャッシュ・オペレーティング・コスト」ベースで利益を生むことができる。(キャッシュ・オペレーティング・コストとは、ある程度の長期間、その鉱山がビジネスを続けていく上での最低限のコストのこと。)

・しかしながら、精錬も含めたもう少しより現実的なコストを考えると、この価格で利益が出るのは80%にまで減少する。

 我々のコスト計算「キャッシュ・オペレーティング・コスト+精錬コスト」ベースでではすべての南アのPGM生産が黒字になるためには、PGM バスケットプライスが$1750以上である必要があります。

 このPGMバスケットプライスの$1750/PGMを実現するにはいろいろな組み合わせが考えられますが、もっとも可能性が高いと考える相場の組み合わせは、

プラチナ :$1800
パラジウム :$ 650
ロジウム :$4000

ランドベースでは、

ランド建てプラチナ :ZAR13500 (現在ZAR11800)
ランド建てパラジウム :ZAR 4875(現在ZAR 3470)
ランド建てロジウム :ZAR30000(現在ZAR20500)

ということになります。

Figure: Cost curve for South African platinum producers


 ほかのメタルと同じようにプラチナ、パラジウムの地上在庫は非常に豊富ですが、このところETFがこの地上在庫を吸い上げる重要な役割を果たしつつあります。特に今回の相場急落においてもETFの残高はあまり変わらず、金 ETFと同じように価格急落時にもロングが保持されるのがETFの特徴といえます。現在のプラチナETFの残高は約32トン、パラジウムの残高は約55.4トンです。

 現在多くのPGM 鉱山は、Anglo Platinum / Lonmin / Impalaの三大プラチナ生産会社の持ち物となっています。そのためこれら大企業の鉱山の中では利益を生む鉱山と損失を出している鉱山を同じ子会社化し、普通なら閉山せざるを得ない儲かっていない鉱山を操業させているものが多くあります。しかしこれらの赤字鉱山はいずれ操業を停止することになり、これは相場の上昇要因になります。

 また、この三大業者以外の中小の鉱山会社も多く、彼らもプラチナ生産では重要な役割を果たしており、その生産コストを下回る相場が長く続くと彼らの存在も危うくなります。つまり、相場の低迷が続くとこれらの鉱山会社は生産をやめざるを得なくなります。彼らが生産をやめると供給が減少し、結果的に相場は上昇するということになるため、理論的に考える限り、大きく生産コストを割り込んだ相場が続くことは考えづらい環境にあります。自動車産業の復活、ETFの存在を考えると余計に安値相場は維持できないと考えていいのではないでしょうか。

 この「キャッシュ・オペレーティング・コスト+精錬コスト」には「鉱脈探査」や資金調達コストなどが含まれていません。もし今後プラチナの需要が増えると考えるのであれば、上記に上げた目標価格よりももっと強気の予想になると思います。

 短期的な価格は大きく動く可能性があり、ランドの動きによるところも大きいのですが、現状の南アの供給サイドの事情を考えた時、ランド建てのPGM価格は上がらなければなりません。そうしないと生産のコストに合わないのでいずれ、生産されなくなります。そうすると特に今のランド建てPGM価格は、投資する側からは魅力的だといえるでしょう。いずれにしろ、需要供給というファンダメンタルを考えたときに、ほかのメタルとは違ってPGMに関して言えばここから高値を追うだけの十分のストーリーがあるといえます。

★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/